「健康食品は臨床栄養の敵だ!」と言われた時代があります。「医療の敵」「病院の敵」と言い換えられることもありましたが、要は、健康食品は治療の妨げになるもので、それを放置しておくのかという考えが医療関係者にありました。健康食品の効能効果を信じた人が、病院に行くのが遅くなったり、医薬品を使うタイミングが遅れることを懸念して、健康食品の効能効果の表現には厳しい制限がかけられています。
健康食品は食品に分類されるので、効能効果を述べることはできないというところから、2001年(平成13年)から保健機能食品制度が設けられ、ビタミン13種類(ビタミンA、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)、ミネラル6種類(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)、脂肪酸1種類(n-3系脂肪酸)については有効性を述べることができるようになりました。
食事で不足しがちな栄養素ということで、アメリカのダイエタリーサプリエントに習って、栄養機能食品はサプリメントと認識されるようになりました。ちなみにサプリメントは補助、補充、補完といったことを意味する言葉です。
2002年(平成14年)には厚生労働省から「保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフの要請に関する基本的な考え方について」の通知が発表されました。保健機能食品だけならサプリメントと限られるのかもしれませんが、保健機能食品等と“等”がつけられたことから、いわゆる健康食品も範囲となり、健康食品とサプリメントのアドバイザリースタッフの教育が始まりました。
初めに手をあげた形になったのが日本臨床栄養協会で、サプリメントアドバイザーの名称で認定教育を始めました。この協会は臨床医と病院の管理栄養士・栄養士が会員で、健康食品は敵という認識の会員もいて、定着には時間がかかりました。しかし、他の医療関係者の管理がなされない団体に先に認定を始められて、栄養を補うというサプリメントがゆがめられることがないようにということで、医療関係者がサプリメントアドバイザーを通じて、健康食品・サプリメントの教育、指導、情報発信を行っていくことになりました。
そのおかげでサプリメントは臨床栄養の味方として研究、広報が進められ、どのように補えばよいのかという情報も消費者は得ることができるようになったのです。