自律神経は“自律”というように自ら律する神経であるので、他の影響を受けにくくなっています。興奮しすぎたときに、リラックスしようと考えても、それが実現できるわけではありません。ストレスを感じたときに深呼吸をすると、気分が落ち着くことは多くの人が経験していることですが、深呼吸をして心拍数や呼吸が安定してきたとしても、血圧が低下したり、腸の活動が改善するほどの影響があるわけではありません。
自分でできることとしては、温度の調整が最も簡単な方法となります。気温や室温が低すぎると身体的なストレスが高まり、体温が低下するのを防ぐために、交感神経の働きが盛んになります。交感神経の働きが高まると興奮作用があるホルモンのアドレナリンが多く分泌され、脂肪細胞の中に蓄積されている中性脂肪が分解されて、脂肪酸として血液中に放出されます。この脂肪酸が筋肉などの細胞に取り込まれてエネルギーとなっていきます。1日に全身の細胞内で作られるエネルギーのうち半分ほどは体熱を高めるために使われているので、交感神経が働くほど体温が上昇するようになります。
逆に気温や室温が温かくなりすぎると、これもストレスになるのですが、熱い中で体熱も多く作られるようになるので、ますます交感神経の働きが高まることになります。こういった状態に対応するためには、室温を副交感神経が働きやすい温度に調整することです。副交感神経が働きやすいのは20~22℃の暖房も冷房も必要のない温度帯で、この温度帯では快適な環境の中でストレスもかかりにくく、ホルモン分泌も高まりやすくなっています。
入浴の機会も自律神経の調整には最適で、湯船(バスタブ)の温度が38℃以下では副交感神経の働きが盛んになり、39~41℃では副交感神経と交感神経のバランスが取れた状態になり、42℃を超えると交感神経に切り替わります。朝の目覚めがよくないときに熱めのシャワーを浴びると目が覚めて、身体が活発に動くようになるのは交感神経に切り替わった証拠といえます。