文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、自閉症のある子どもの指導に当たって、自閉症の概要として基本的な障害について示しています。前回に続いて、その他の特徴について紹介します。
自閉症スペクトラム障害では、こだわりの現れ方の3つの基本的な障害特性に加えて、感覚知覚の過敏性、刺激の過剰選択性、知能テストの項目に著しいアンバランスが見られることがあります。
感覚知覚の過敏性や鈍感性は、多くの自閉症のある子どもにも見られますが、その現れ方は多様であり、例えば一般に不快であると感じるガラスを爪でひっかいたような音は問題ないが、特定の人の声や教室内の雑音には極端な恐怖を示したりすることがあります。他人に触られることを嫌う一方で、身体が傷ついても、痛みを感じていないように見えることもあります。また、銀紙やセロファンなどの光る物、換気扇や扇風機などの回転するものに強い興味を示すこともあります。
このように、感覚知覚の過敏性や鈍感性は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などのさまざまな感覚において見られ、パニックや突然の不安定状態などの原因の多くが、特定の感覚刺激に対する不快反応によって引き起こされている可能性があります。それらを回避するためには、感覚の過敏性や鈍感性の状態を観察して、実態把握する必要があります。
感覚過敏といわれている状態の背景には、感覚過敏に対する過剰反応があることが多いと推定されています。騒々しい音が苦手というように、その刺激自体が嫌な場合や、その刺激を受けたときに他の不快な状況があり、その刺激が不快な情動を結びつけられてしまうという条件付けがされている場合、さらにその刺激の意味がわからずに不安となっている場合などがあります。
一方、知的障害を伴う自閉症の場合、関連する行動として、時には手を噛んだり、頭を何かにぶつけたりするといった自傷行為が見られることもあり、また身体を前後に揺すったり、手をひらひらさせたりするなどを繰り返すという常同的な行動があることもあります。
刺激の過剰選択性とは、事物のある一つの要素だけに、常に同様に反応をすることや、ある一つの要素でしか物事を捉えていない状態を指します。物事の全体像の把握が苦手な自閉症の特徴を示す考え方の一つです。
例えば、あごひげのある人には誰であってもパパと呼んだり、あるいは父親が眼鏡を外してしまうと、父親がどこかへ消えてしまったような反応を示したりすることがあります。父親という存在からの情報には、男性、親、顔の特徴などさまざまな多次元的な要素が含まれていますが、その一つだけに反応することです。これらの刺激の過剰選択性に関する現象は、シングルフォーカスという用語で説明されることもあります。
知能テストの項目に著しいアンバランスがあることに関しては、例えば知的発達に遅れがある場合、自閉症を伴わない知的障害のある子どもとは違いが見られ、下位検査間で偏りがあり、言語性の下位検査に比べて動作性の検査の成績がよい傾向があります。つまり、見本と同じように組みわせる問題などで成績がよい傾向が見られることがあります。
このほかに、自閉症の特性の一つとして、不器用さがあげられ、運動や製作などにおいて配慮をする必要があります。