文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、自閉症のある子どもの指導に当たって、自閉症の概要として基本的な障害について示しています。今回は自閉症の障害の状態の把握について紹介します。
自閉症の状態の把握に当たっては、行動上の諸問題、それに関係する生育歴、医療歴、生育環境、家庭や学校における生活の状態、集団参加や学習の状態、知的機能の状態などを把握する必要があり、その方法には保護者などや担当などからの聞き取りや、行動観察、諸検査の実施などがあります。
①身辺の自立の状態
知的障害を伴う子どもについては、身辺の処理に関して、食事、排泄、衣服の着脱などについての手順や方法を身につけている程度を把握することが判断の資料となります。自閉症のある子どもなどの一部には、極端な偏食がある場合があります。食べる物が決まっているために、それ以外の物が出る給食などは食べないという場合があります。知的障害を伴う自閉症の子どもの場合は、自宅以外では用便をしないなどの強いこだわりを示すことが見られる場合もあります。
②集団参加の状態
自閉症の子どもに共通する傾向としては、自由な対人交流場面において、コミュニケーションのやり取りや行動の問題が生じてくる場合が多くなっています。また、知的障害を伴う自閉症の子どもの場合には、同年齢の集団に参加することの困難性がみられます。
集団参加の評価の方法としては、幼稚園、保育所、児童福祉施設などでの直接的な行動観察が適切となります。なお、直接に観察することが困難な場合は、幼稚園などからの報告の内容を分析して、資料として活用することができます。
また、自閉症の子どもの場合、集団参加の状態を把握するためには、一定のルールに基づく活動への参加について観察する必要があります。例えば、順番を待つこと、ジャンケンや綱引きなど勝ち負けの簡単なルールが理解できること、鬼ごっこやかくれんぼなどでの役割の違いなどを理解して活動に参加することなどを観察します。特に、集団ゲームなどの活動の中で、ルールに関係のない行動をとることから、ルールがわからないと認識されることがあります。一方で、理解したルールはきちんと守って活動することも多くなっています。自閉症の子どもの場合、その都度、正確な言葉で説明されないと理解できず、学習できないことが多いため、ルールに関係のない行動のように見られるときがあるので留意が必要です。