荷物を担いで正しい歩行姿勢を身につける

少し前屈みの姿勢で歩行すると前進のための勢いがつきやすくなって足の力が路面に伝わりやすく、腕を大きく振ることができる上に、腹筋と背筋が締まって、上半身と下半身の動きを安定させることによって効果的に前進することができるようになります。前に、正しい歩行姿勢を覚えるにはコツがあるので体験しないとわかりにくいということを書きましたが、「その方法を言葉で伝える方法はないのか」ということをネット関係者から言われました。「インターネットは画像で示せるものの、それなしで伝えることは難しくても、口で伝えなければならないこともあるので」という、わかりにくい提案でした。
それに対して、身振り手振りで伝えるのではなく、こうやれば大丈夫という方法を提案を返しました。それは荷物を背負って歩くことです。両手が自由に動かないといけないので、荷物はリュックタイプのバッグに入れて背負います。バッグを背負っているだけでも少しだけ前傾姿勢になります。荷物が重くなるほど足腰の力が必要になるので、前傾の角度がついていきます。1〜2kgくらいの荷物であっても、つまり500mlのペットボトルを2〜4本、バッグに入れて歩くだけでも効率のよい歩行ができる姿勢を体感することができるのです。
荷物を背負って歩くことは、荷物の分だけ体重が増えたのと同じように消費エネルギー量が多くなります。太っているのは一般にはよいことではないとされますが、同じだけの距離を歩いても体重が重いほうが体脂肪を燃焼させる能力が高く、歩くことによって発生するエネルギーを多くすることができるわけです。
消費エネルギーは性別、年齢によって異なりますが、20代の女性を例にあげると、分速60mで荷物を背負って30分間歩いた場合には、1kgにつき約15kcalの消費エネルギー量が増えることになります。これを計算式で表すと「0.0534(分速60mの活動係数)×0.959(20代男性を1とした場合の補正係数)×1kg×30分」となります。4kgの荷物を背負って1時間歩けば、120kcalの消費エネルギー量になります。
これは平らな道を歩いている場合のことで、同じ歩行速度であっても、坂道を歩くと体重による筋肉の負荷が加わり、消費エネルギーが高まっていきます。平らな道を歩いているときの係数を1とすると、傾斜が1%増すたびに係数は0.125ずつ高まっていきます。傾斜の1%は100mで1mの高さに達する角度です。この補正係数で計算すると、1%では1.125倍、2%では1.250倍、3%では1.375倍、4%では1.500倍、5%では1.625倍となります。角度が急になるほど消費エネルギーは増えるものの筋肉にかかる負荷が強くなって長続きしなくなります。ゆるい感じの坂道で、長く歩くほうが消費エネルギーは大きくなるということです。
この具体的な数値と理論、実践の方法については、インターバルウォーキング指導者の講習テキストの中で紹介しています。