薬学の師匠の教え

薬学というと医薬品の学問で、医療機関では薬剤師として医療を支えています。薬学は医薬品だけでなく、健康食品・サプリメントも活動範囲にあり、薬学系の大学で実施されている健康食品管理士制度も薬学研究の一部を占めています。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、薬学の立場で健康食品・サプリメントの研究に取り組む多くの専門家と付き合ってきましたが、薬学博士としてテレビなどのメディアでも活躍してきた久郷晴彦先生は、当法人の理事をお願いし、今でも相談役として頼りにしています。生き字引のような存在で、91歳になられた現在も私たちの行く先を正してくれています。
健康食品というと、単品の素材だけのものと、メインの素材の効果を高めるために複数の素材をプラスするものがあります。本当に高まっているのか確認しにくいところですが、組み合わせで効果を高めたというのは消費者に響きやすいトークです。
薬学の発想は、これとは違っています。医薬品は単体の効果の薬を対象者に合わせて、複数の組み合わせで使用されています。この組み合わせが処方箋であり、お医者さまの腕の見せどころです。患者に合わせて、薬学の専門家の薬剤師が腕を発揮することはないわけですが、健康食品の素材については、まさに組み合わせの妙があり、それについて久郷先生から教えられたことがあります。
今でこそ健康食品の特徴的な成分として知られるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10ですが、以前は医薬品の成分であって、2001年にコエンザイムQ10が食品としても使用が許可され、続いて2002年にL‐カルニチンが、2004年にα‐リポ酸が許可されました。
コエンザイムQ10は代謝の補酵素なので、使い方によってはダイエット効果が得られ、優れた抗酸化成分として使うことができます。かなり期待された成分でしたが、吸収率の低さもあって、思ったほどヒットはしませんでした。それに続いてL‐カルニチンが許可されたときに、コエンザイムQ10との組み合わせで脂質代謝を促進させることができることから、その組み合わせ商品を期待していました。しかし、なかなかヒット商品は生まれませんでした。
最後にα‐リポ酸が許可されたことで、糖質代謝をプラスして、画期的な健康食品になり、メタボリックシンドローム対策の決め手になるだろうと期待しましたが、これも期待を裏切られる結果となりました。というのも、組み合わせの効果に気づいていた人もいて、コエンザイムQ10、L‐カルニチン、α‐リポ酸を一つの健康食品の中に詰め込んだものが作られたのですが、単純に組みわせればよいわけではないことが理解されなかったために、せっかくの成分が活かされなかったのです。
そのことについては、これまでに何度か説明してきましたが、組み合わせのメリットとデメリットについて理解させてもらい、摂取のタイミングを考え、新たな加工法を追い求めたのも、久郷先生の教えがあったからです。