血圧の正常値は変わったのか

適切な血圧というと、最高血圧が135mmHg、最低血圧が85mmHgとされてきました。最高血圧は収縮期血圧のことで、心臓から血液が送り出されて動脈に強い圧力がかかった状態の血圧です。最低血圧は拡張期血圧のことで、心臓から血液が送り出されていないときの血圧です。この数字が基本とされていますが、その背景となったのは1986年に岩手県大迫町(おおはさままち)で始まった血圧の測定と健康状態について調べた大迫研究で、その結果、最高血圧が135mmHg未満、最低血圧が85mmHg未満の人が健康状態が高かったことから、これが基本とされるようになりました。大迫町は現在では花巻市に合併されています。
この「最高血圧が135mmHg未満、最低血圧が85mmHg未満」は家庭血圧の正常値で、診察室血圧の正常値は「最高血圧が140mmHg未満、最低血圧が90mmHg未満」と少し高めになっています。これは医師や看護師の前では緊張して血圧が高めになることから定められたものです。
高血圧は血管にダメージを与える要因で、他の要因が加わると、動脈硬化のリスクが高まることから、低めの設定となっています。特に血管にダメージを与えるのは糖尿病であることから、糖尿病の人の家庭血圧の正常値は「最高血圧が125mmHg未満、最低血圧が75mmHg未満」、診察室血圧の正常値は「最高血圧が130mmHg未満、最低血圧が80mmHg未満」となっています。
これまで示してきた基準は、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」に掲載されているもので、もちろん全国の医師が、これに従って診察をしています。
最高血圧が125mmHg、最低血圧が75mmHgというのは体が興奮状態になったり、疲れているとき、寒いときには簡単に超えてしまうような数値です。これまでの基準が頭にあって、「最高血圧が125mmHg未満、最低血圧が75mmHg未満」なら安心してしまうところですが、血糖値を測定して糖尿病でないことを確認してからでないと、簡単に安心することはできないということです。