言い間違い14 青田刈り

米不足で買い取り価格が高騰していることに目をつけて、市場に出回っている米を買いまくることが広がり、さらに高値で流通することになりました。

この調子だと、来年も高値で売れそうだというので田植えもしていないのに先買いする業者も現れていて、このことは「茶田買い」と呼ばれています。

そのような言葉はなくて、今回の騒動によって生まれた造語ですが、その元になっているのは「青田買い」です。

これは稲の収穫前に、その田んぼの収穫量を見越して先買いすることで、それよりも先に買うのだから、まだ茶色の田んぼの状態で来年の米を買うということを批判する意味で使われています。

「青田買い」が頻繁に使われたのは、あまりの人で不足に対応するために新卒学生の就職活動の開始時期の前に、内定を出す会社を批判する意味で使われるようになりました。それが実際の米の争奪戦に使われるようになるとは、思ってもみなかったことでした。

ということで、「青田買い」が正しい使い方ですが、その誤用ということで例にあげられるのは「青田刈り」です。「青田刈りなんて言葉はない」と言われることもあるものの、ないわけではありません。

青田刈りは、実る前の青い稲(実際には緑色ですが)を刈ることで、兵糧攻めのために敵の城の周りの稲を刈ってしまうという戦法を表しています。

戦国時代は兵士の大半は農民か農家の出身であり、さまざまな戦法の中で、これだけはしたくないとされたのが「青田刈り」でした。
米作りの大変さを身をもって知っているだけに、したくないことをさせられることを「青田刈り」と言って、嫌う行為を指す言葉にもなりました。

農家や米の流通に関わってきた人たちにしてみれば、今回の米騒動は「青田刈り」と表現しても、あながち間違ってはいないようです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕