言い間違い2 足元を掬われる

言い間違いは、単に言葉の意味を理解していないというだけでなくて、わざと間違って使っているグループもあります。どのようなグループなのかということは、徐々に明らかにしていくとして、同じ言葉が通じる仲間の見極めとして使われています。

今回のお題の「足元を掬われる」は言い間違いの代表的なもので、中には「信じる者は足元を掬われる」と飛躍した使い方をしている人もいました。これは「信じる者は救われる」と「足を掬われる」が混同した例です。

「信じる者は救われる」は聖書に出てくる言葉で、神を信じて、その教えに従う者が救済や救いを得るという意味で使われます。その有名な言葉の“救われる” と“掬われる”が同じ読み方の「すくわれる」であるところから「信じる者は足元を掬われる」となったわけです。

「足を掬われる」は、足を掬う(相手の隙につけ入り、相手の失敗や負けに導くこと)の受け身での使い方で、「何かを試みているときに不意をついて邪魔をされる」ということを表しています。

「国語に関する世論調査」(文化庁)では、「足をすくわれる」と「足下をすくわれる」の、どちらの言い方を使うかを聞いていますが、本来の使い方の「足をすくわれる」を使う人は、本来の意味ではない「足下をすくわれる」を使う人のほうが多くなっていました。

調査年によって違いはあるものの、最も開きがあった調査では4.4倍にもなっています。

このようなことが起こるのは、「足下を見られる」「足下につけこまれる」「足下に火が付く」などと混同したものと考えられています。

足元でも足下でも不意をついて邪魔をされないように、新たなことを始めようとするときには、念には念を入れて、すべての出来事を想定して、どれに対しても対応できるように準備をしておくことが必要という戒めとして、正しい使い方と誤用を取り上げました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕