愛想(あいそ)は他人に寄せる好意や愛情のことで、他人によい感じを与えるような態度を指しています。愛想は、すでに振りまかれているもので、「愛想を振りまく」は二重に強調した表現となってしまいます。
振りまかれていないのは愛嬌で、正しい使い方は「愛嬌を振りまく」となります。これは愛嬌を愛想と取り違えた使い方と考えられます。
愛嬌は好感を覚えさせる柔らかな様子で、にこやか、かわいらしいという意味があり、もう一つ「相手を喜ばせるような言葉や振る舞い」を意味しています。振る舞いという表現が出てきますが、振る舞いは本人が振りまこうとしているわけではなくて、自然のうちに醸し出されてくるものです。
昨今は(と言うべきか、かつてはと言い換えるべきか)“ぶりっ子”のように幼稚な仕草や態度で甘えるような行動をするのではなく、“あざとい”行動が増えています。これは抜け目がなく貪欲な姿勢を示す言葉で、これも「愛想を振りまく」行動とも言えます。
そんな人が目立つ時代には「愛想を振りまく」は、正しい表現と思われても仕方がないような風潮がありますが、あくまで正しいのは「愛嬌を振りまく」です。
「国語に関する世論調査」(文化庁)では、周囲に明るくにこやか態度をとることを、どちらの表現をしているか調査していますが、「愛想を振りまく」と「愛嬌を振りまく」は拮抗していて、誤用の「愛想を振りまく」のほうが若干優位、つまり間違った使い方をしている人が多いことがわかります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕