「汚名挽回」という言葉を聞いて、すっきりしない、わかったようでも受け入れ難いという人は少なくないはずです。というのは、単に言い間違い、誤用といったことではなくて、「汚名挽回」は言い間違いではないと主張する人が少なからずいるからです。
「挽回」は、失ったものを取り返すというのが一般的な感覚かもしれませんが、元の状態に戻すという意味もあります。「劣勢を挽回する」という使い方が、これに該当します。
辞書的には「挽回する」は、劣勢、遅れと組み合わせて使われていますが、書き言葉の状況を詳細に見ることができる検索システムで調べてみると、「汚名を挽回する」という例が出てきます。
これを根拠として「汚名挽回」は間違いではないと言い出す人もいるわけですが、言葉づかいに厳しいNHKが一風変わった調査を実施しています。それは以下のような質問をしています。
『「汚名」は「悪い評判」、「挽回」は「取り戻す」という意味なので、「汚名挽回」は「破る評判を取り戻す」ということになってしまうから間違った言い方である、という指摘があります。これについて、お考えに最も近いものをお答えください。』
選択肢のうち「このような指摘は聞いたことがあるし、そのとおりだと思う」と「このような指摘はいま初めて聞いたが、そのとおりだと思う」は【そのとおりだと思う】という肯定派としています。こちらの回答は47%となっていました。
これに対して、「このような指摘は聞いたことがあるが、そうは思わない」と「このような指摘はいま初めて聞いたが、そうは思わない」は【そうは思わない】という否定派としています。こちらの回答は42%で、わずかな差かもしれませんが、肯定派に軍配が上がりました。
全体としては、肯定派が多いものの、関東と関西で比較してみると、関東では肯定派が多く、関西では否定派が多いという結果になっていました。
さて、「汚名挽回」は正しい使い方なのかということの解答ですが、これは言い間違いであって、正しい使い方は「汚名返上」です。
「汚名返上」は、新たな成果をあげて悪い評判を取り除く(退ける)ことを意味しています。マイナスになった評判をゼロに戻すことでは終わらず、プラスにするという勢いのある言葉ということになるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕