言い間違い6 押しも押されぬ

「押しも押されぬ」は完全に言い間違い、誤用であるのに、今も多くの人が普通に使っています。テレビ番組でもタレントやアイドルが平気で使っていることから、何か意図があって言わされているのではないか、とさえ考えてしまうほど、よく耳にするフレーズです。

正しい使い方は「押しも押されもせぬ」で、自分から押すこともなく、他人から押されることがないという意味で、堂々とした確かな実力がある状態を指しています。

「押しも押されぬ」は、「押しも押されもせぬ」と「押すに押せない」が混ざって誤った使われ方がされるようになったと考えられています。

「押すに押せない」は押そうとしても押すことができないということで、意味するところは「押しも押されもせぬ」と似たところがあります。ただし、押すことだけであって、押されることは想定されていません。

たびたび登場する文化庁の「国語に関する世論調査」では、「実力があって堂々としていること」という本来の言い方である「押しも押されもせぬ」を使っている人は42%であったのに対して「押しも押されぬ」を使う人のほうは48%もいて、20〜30代では51%と半分以上もいました。

誤用も使われているうちに正しい言葉と認識されるようになり、そのうち辞書にも両方が掲載されるようになり、長く経過すると正しい言葉になる、ということは過去にもありました。

しかし、「押しも押されぬ」は、どの辞書でも、NHKの放送用語でも誤用と指摘されて(決めつけられて)います。

テレビ番組では出演者が誤用をした場合にはテロップで正しい言葉を流すということが行われていて、その代表的なものは「すごい」が「すごく」と直されています。

「押しも押されぬ」も正しい言葉のテロップを流してもよいと思うのですが、それはNHKでも行ってはいません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕