「慣れていないため、その場に感情などがそぐわないために動作や表情が辿々(ただたど)しくて不自然であること」は、「ぎこちない」と言い表されます。他の言葉の誤用と思われることがないくらいに多用されているのですが、実は誤用です。
正しくは「ぎごちない」です。漢字では「擬古ちない」と書きます。擬古は古いものを真似することを意味していて、過去にあることを習って、その通りに実行することの擬古ちの非定型であるので、初めに書いた説明となります。
「ぎごちない」と「ぎこちない」の使い分けを『NHKことばのハンドブック』で見てみると、1992年の第1版では「ぎごちない」を第1の読み、「ぎこちない」を第2の読みとしていました。これは「ぎこちない」の存在は認めるものの「ぎごちない」が好ましい表現だというスタンスです。
ところが、2005年に刊行された『NHKことばのハンドブック』(第2版)では、「ぎこちない」が第1の読み、「ぎごちない」が第2の読みと逆転しました。
調査によって差はあるものの、どの結果も「ぎこちない」が優勢で、最も多かったのは85%にもなっていました。
「ぎこちない」は「こんがらがる」と並んで誤用の代表のように扱われていたのですが、そのうち間違いだと言っているほうが、間違いとされる時代は、すぐ先に迫っているようです。
ちなみに、「こんがらがる」と使われることが多いのですが、正しくは「こんがらかる」です。
「こんがらかる」は糸がもつれて絡まることを指していて、そこから物事がうまくいかずに混乱することを意味しています。「こんがらがる」と「こんがらかる」は、まさにこんがらかった状態になっているということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕