言い間違い8 恩を着せる

「恩を着せる」というのは誤用だということは多くが知っていることではあっても、言いやすさもあって今も使っている人は少なくありません。これは「恩を売る」「恩を返す」「恩を仇で返す」という言葉があって、恩に続いて出てくるのが「を」であることが関係しています。

正しい使い方の「恩に着せる」は、「恩を施したことを、ことさらありがたく思わせること」を意味しています。「恩着せがましい」という言葉もあって、こちらのほうが、より強い意味合いを感じさせる表現です。

恩を受けたら、それに対して相手が恩と感じるようなことをして返すのが当たり前の感覚かと思うのですが、今どきのスタイルなのか恩を受けても、そのままスルーする人も目立つようになっています。

これを私たちは冗談のように「オンをオフで返す」と表現しています。良かれと思ってスイッチをオン(ON)したことへの返しがオフ(OFF)であったら、これは悲しい気持ちになってしまいます。

そんな人・場面が増えてきて、黙って見逃すわけにはいかないという気持ちがムクムクと湧き上がってきて、恩には恩で返すことを伝えよう、教えてあげようという気持ちの表れが「恩に着せる」「恩着せがましい」という行動になるのかもしれません。

となると、これは「恩に着せる」というよりも、むしろ「恩を着せる」と表現したほうがいいような気持ちにもなってくるところです。そういったことも誤用が増えている結果と言えそうです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕