リスク管理というと、想定されるリスクが起こらないように、リスクの原因を明らかにして防止策を実施することをいいます。それと同様に使われることがある危機管理は、危機が発生したときにマイナスをできるだけ小さくして、できるだけ早く危機状態から脱することを指しています。私が国や、その出先機関、関連団体のためにやってきたのはリスク管理のほうです。危機管理のほうは専門のアドバイザーがいて、どのように会見を開いて、どんなふうに謝ればよいのかまで教えてくれるので対処法の正解もあり、料金づけもしやすくなっています。
ところが、私がリスク管理に関わったときには「予算にない」ということで(今にして思うと本当か?とも思うのですが)、ギャラなしでリスクの洗い出し、対処法などを次々と出していました。その見返りは、国が関連する団体を紹介してもらって、広報などの仕事をさせてもらったことです。
リスク管理といっても役所には専門の担当もいて、私が関わってきたのは、担当が出してきたリスクのほかにリスクがないのかを“重箱の隅をつつく”ような粗探しだけでした。それでも需要があったのは、妙なところを突っ込まれて評判を落とすようなことを下げるためでした。政治も行政も国民の信頼があってこそ成り立つもので、評判を落としたら本来の仕事がしにくくなります。
何もコロナ対策やオリンピックのボランティアの弁当の廃棄のことを言っているわけではなくて、制度の弱点、法の抜け穴を掻い潜って悪いことを企んでいる人が考えそうなことをリストアップして、それをさせないためのチェック項目を示すことです。今のように特殊詐欺が横行していない時代だったので、その手の仕事は経験していません。経験した中で強く記憶に残っているのは、健康食品の販売会社の手口の洗い出しで、こんなにも手口があるかと驚かれるくらい徹底した調査でリストアップしました。
そのおかげで、サプリメントのアドバイザリースタッフ制度ができたときに、法律講師をさせてもらい、機能性表示制度の立ち上げのときにも委員に加わらせてもらいました。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)