“走るボディビルダー”の支え

筋肉強化のプロというとフィットネスジムなどのトレーナーがあげられますが、その究極ともいえるのがボディビルダーです。筋肉を強化する運動に励んでいる人は、身体が重くなりすぎることから走るのは苦手だと思われがちです。しかし、トップランクのボディビルダーを目指す人はランニングを欠かすことができません。激しい筋肉トレーニングのあとにランニングをしないと、健康的に筋肉を増やすことができなくなります。
その理由ですが、筋肉トレーニングによって乳酸が多く発生します。乳酸は筋繊維(筋肉細胞)のミトコンドリアの中で不完全燃焼が起こるために発生するもので、一般には疲労物質と呼ばれています。乳酸が大量に発生したときに、そのまま放っておけば疲労が回復しにくく、筋肉も動きにくくなるために疲労物質となるのですが、これをエネルギー源として活用すれば、筋肉を増強するためのエネルギーを多く作り出すことができます。
乳酸はブドウ糖が解糖系と呼ばれる酸素を用いない代謝によって発生するもので、もともとがブドウ糖であったので、酸素を多く取り込んでエネルギー代謝を行うことによって、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を多く作り出すことができます。そのために、ボディビルダーは筋肉運動のあとに走って、そのエネルギーを筋肉の増強に役立てているのです。
その走るボディビルダーが、自分のためではなく、他の人のために走っているという例があります。それは視覚障害のアスリートのサポートで、きずなと呼ばれるロープを持って一緒に走っています。普通は健常のランナーがサポートに当たるのですが、通常の視覚障害ランのほかに車椅子マラソン、パラ陸上の選手がリレー方式で走るという交流スポーツイベントがあります。ボディビルダーは筋肉の使い方の専門家であり、強化する筋肉、活用する筋肉が異なる各競技のサポートにボディビルダーが適していることから指名されています。ボディビルダーは孤独なトレーニングにストイックに取り組んでいるだけではないのです。