超高齢社会は自治体の清掃事業の費用が増加

今の日本は高齢化社会でも高齢社会でもなくて、超高齢化社会であり、超高齢社会となる高齢化率28%が目前に迫っていることは以前に紹介しました。目前に迫っていると言われても、「実はまだ先のことではないか」と考える人は多く、そう考えて問題を先送りしたい気持ちもわからないではありません。思った以上に子供が生まれず、高齢者が長生きをしているため、ひょっとすると2025年には超高齢社会になっているかもしれないのです。
その根拠となっているのは戦後生まれの団塊の世代の存在です。75歳以上は後期高齢者に分類されますが、2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者となります。「65〜74歳の前期高齢者のほうが多いのだから、そんなに喫緊の課題なのか」という質問をセミナーのときにしてきた聴講者がいましたが、こういう質問が出るのは真実を伝えきれていないからです。
これまでは前期高齢者のほうが多かったのですが、なんと今年(2018年)のうちに後期高齢者が前期高齢者の数を追い抜くことが人口調査で判明しています。それだけ日本人は長生きになったということで、本来なら喜ばしい状況と言いたいところですが、心身ともに元気で、認知機能も若いときに比べたら低下するのは仕方がないものの、認知症と、その予備群である軽度認知障害の割合が、それほど多くなければ悲惨な状態とは呼びにくいところがあります。
しかし、現状発表されているデータ(2012年統計)の認知症患者が462万人、軽度認知障害患者は400万人と推定数から、2025年には認知症患者は700万人、軽度認知障害は600万人を超えると推定され、合わせると65歳以上人口の35%を超える割合となってしまうのです。これは現在の健康状態が年齢相応に進んでいくという希望を含んだ推計であって、40%を超えるという推計も別に存在しています。
話が随分と遠回りしましたが、今回のテーマの自治体の清掃事業も危機的な状況になっています。高齢者が増えると消費活動が低下していくことにつれてゴミの量も減っていきます。だから、自治体の清掃事業(ゴミ収集)を受託している事業者の仕事は楽になっていくように思われています。ところが、後期高齢者が増えると分別などのルールが守られなくなり、可燃ゴミに不燃ごみが混入したり、生ゴミの水切りがなされなかったり、粗大ゴミのルールが守られないどころかルールを理解できない人が増えるといったように、ただゴミ袋に入ったものを、そのまま収集車に入れればよいという状況ではない例が急増しています。
自治体から受託している事業者の負担が増えて人件費がかさみ、その割には委託費が増えず、高齢化率が高まるのに比例して苦労しているという話は、あちこちの自治体で見聞きしています。それを解消するように委託費が増える状況であるのに、ここに税金が多く使われると介護や介護予防、脳機能を含めた健康維持に使われる分が減ることになり、それが事業者の負担を増やすことになるという、よくない循環に陥ることになります。
ルールの徹底はもちろんであり、徹底を呼びかけるのは大切なことですが、超高齢社会の認知機能の維持と、認知機能に合わせた対策を考えることも大切になってくるということをセミナーなどで話をさせてもらっています。