行動変容という言葉は、健康づくりに関わる師匠筋にあたる方々から、ずっと聞き続けてきたことです。
初めに記憶に刻まれたのは、病院の栄養管理の仕事を始めたときのことで、生活習慣病であることがわかり、医師による治療を始めたものの、なかなか成果が出ない人たちに対して実施される栄養指導のマニュアルのタイトルに「行動変容」と書かれていました。
中でもエネルギーコントロールと呼ばれる糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)に対する栄養指導は、指導どおりに実施してくれる方は多くはないのが実態です。
食事内容を変えられない、3食(朝食、昼食、夕食)を制限すると食後に余分なものを食べてしまう、3食は指導どおりにできたとしても間食の習慣が変えられない、ということが多く見られました。
医療機関で栄養指導を担当する管理栄養士の中には、あまりに患者が言うことを聞いてくれないことから「そんなことだから糖尿病になる」と思わず口走ってしまったという話を聞いたこともあります。
生活習慣病の要因になった以前の食事を変えないと医師による治療の効果が期待できないことについての説明が足りないために、積極的に変えようとする行動につながらないということがあげられます。
理解なしに行動を求められても行動が起こりにくいのは当たり前のことで、それが従来の生活習慣を大きく変えるとなると抵抗感があって、中には実施していないのに医師に事実と違うことを報告する患者が増えることにもなります。
その報告を真に受けて、治療効果がなかったということで医薬品の量を増やす、強い種類に変えるという困った結果になっているということも、実際には起こっていることです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕