厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「慢性疾患を有する人の身体活動のポイント」の「科学的根拠」を紹介します。
〔科学的根拠〕
本ガイドの策定に当たっては、慢性疾患のうち、特に、有病率が高く、運動が効果的な疾患として、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症について整理をしました。適度な身体活動は、これら慢性疾患を有する人の生活の質の向上を促進し、新たな疾患を発症するリスクを低減します。
機序としては、インスリン抵抗性の改善、身体機能の維持・向上、認知機能の改善、免疫機能の改善などによる効果が示されています(詳細は、「身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム」を参照。)。
特に、血圧・血糖・脂質のコントロールだけでなく、身体機能の維持・向上やQOLの維持・改善を含め、健康寿命の延伸につながることが期待できます。例えば、2型糖尿病患者を対象としたJDCS研究で、余暇身体活動最高群は最低群に比べて、有意に脳卒中発症、総死亡のリスクが低いことが報告されています。
最高群の下限週15.4メッツ・時は中等度の速度でほぼ1日30分に相当し、平均値の週36.8メッツ・時は1日60分を超える程度です。
身体活動量については、個人の状態等に応じて調整することが重要です。慢性疾患を有する人向けには、成人・高齢者の推奨事項を踏襲し、またこれまでの疾患ガイドラインで示されてきた1日30分(意識して身体を動かす30分)とも矛盾しない形としました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕