運動ガイド38 身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム1

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム」の「身体活動・運動の種類」「疾患の種類」を紹介します。

〔身体活動・運動の種類〕
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴うすべての活動のことです。

身体活動は、日常生活における家事・労働・通勤・通学などに伴う「生活活動」と、健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施される「運動」の2種類に分類されます。

さらに強度、代謝、動きなどの違いによって、酸素によるエネルギー基質を分解することで継続される歩行などの「有酸素性身体活動」と、酸素なしでエネルギー基質を分解し短時間で大きなパワーを発揮する筋力トレーニングなどの「無酸素性身体活動」の大きく2つに分類できます。

有酸素性身体活動を適切な時間・強度・頻度・期間で習慣的に実施すると、エネルギー消費量が増加し、体脂肪が減少します。また、肺の酸素の取り込みや心臓・動脈の酸素運搬能、骨格筋の酸素利用能が改善することで、全身持久力(最大酸素摂取能力)が改善します。

さらに、血圧、血糖値、血中脂質といった生活習慣病の危険因子を効果的に改善します。有酸素性身体活動の習慣的実施者や全身持久力が高い人で、死亡や様々な疾患の発症のリスクが有意に低いことには、このような全身の様々な器官の適応が関連しています。

筋力トレーニングなどの無酸素性身体活動は、筋に蓄積されたクレアチンリン酸やグリコーゲンを酸素なしで分解することで、短時間にATPを合成し、一時的に大きな力を発揮する活動様式です。

習慣的な実施に伴う、筋肥大や筋力増強、骨格筋の抗酸化能。抗炎症能やマイオカイン分泌の増加が、死亡や一部の疾患発症リスクの低下と関連すると考えられています。

〔疾患の種類〕
疾患を、代謝性疾患(肥満症、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、脂質異常症)、心血管疾患(高血圧、虚血性心疾患、心不全、脳卒中)、運動器障害(関節痛、腰背部痛、サルコペニア)、精神・神経疾患(うつ病、不安、ストレス、認知症)、一部のがん(大腸がん、子宮体がん、乳がんなど)の5つの疾患群に分類し、疾患群別に身体活動が関連する部位・器官に及ぼす適応のメカニズムを整理しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕