便秘も下痢も検査によって原因が明らかにされるので、それに適した治療を行うことによって改善することができます。ところが、検査をしても原因がわからず、腹痛や腹部の不快感があって、便秘や下痢が続くことがあります。この状態は過敏性腸症候群と呼ばれます。
過敏性腸症候群は主に大腸と小腸の運動と分泌機能の異常で起こる病気の総称で、略称としてIBS(Irritable Bowel Syndrome)とも呼ばれます。以前は、過敏性大腸症候群と呼ばれていたのですが、大腸だけでなく小腸も含めた腸全体に関係することがわかってから、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。
過敏性腸症候群は日本人では15~20%にみられるといいますが、便秘や下痢などの不調によって専門医を訪れた人の40%ほどが過敏性腸症候群と診断されています。
便通の状態によって、下痢の多い下痢型、硬い便が多い便秘型、便秘と下痢を繰り返す混合型に分類されています。男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多いというように男女差があるのですが、患者の総数を見ると女性が1.5倍ほどとなっています。そして、年齢別では20〜30代が最も多くなっています。
過敏性腸症候群は、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常に分けられていますが、実際の原因は実は明らかにはなっていないのです。ストレスが高まると過敏性腸症候群が起こりやすくなることから、ストレスが原因とされることもあるのですが、ストレスは原因ではなく症状を悪化させる要因となっていることが明らかにされています。
ストレスが引き金になって過敏性腸症候群が悪化するだけでなく、下痢や便秘の症状がストレスとなり、さらに過敏性腸症候群を悪化させていって治りにくくなるというように、悪循環にも陥りやすいのが過敏性腸症候群の特徴であり、困ったところでもあります。