「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、科学的根拠に基づいたシステマティック・レビューを行っています。レビューの方法について紹介します
〔レビューの方法〕
可能な限り科学的根拠に基づいた策定を行うことと基本としています。
システマティック・レビューの手法を用いて、国内外の学術論文や入手可能な学術資料を最大限に活用することとなりました。
エネルギー及び栄養素についての基本的なレビューにおいては、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の策定において課題となっていた部分について特に重点的にレビューが行われました。あわせて、高齢者、乳幼児などの対象特性についてのレビューが行われました。
エネルギー及び栄養素と生活習慣病などの発症予防・重症化予防との関係についてのレビューは、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下、フレイル、骨粗鬆症に関するリサーチクエスチョンの定式化を行うため、可能な限りPICO形式を用いてレビューされました。
このほか、栄養素摂取量との数量的関連が多数の研究によって明らかにされ、その予防が日本人にとって重要であると考えられている疾患に限って、レビューの対象とされています。この際には、研究対象者の健康状態や重症度の分類に留意して検討されています。
これらのレビューは、令和4〜5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)の「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究」を中心に行われています。
こうしたレビューの方法については、今後その標準化を図っていく必要があります。
特に摂取量の基準となる数値の策定を目標とする食事摂取基準で求められるレビューの方法は、定性的な予防および治療指針の策定を目的とする他のガイドラインで求められるレビューの方法とは異なるため、食事摂取基準に特化したレビュー方法の開発、向上、標準化を図る必要があるとしています。
なお、前回の策定までに用いられた論文や資料についても必要に応じて再検討が行われました。ただし、他の医療分野と異なり、エビデンスレベルを判断して明示する方法は、人間栄養学、公衆栄養学、予防栄養学では十分に確立されていません。そのため、得られるエビデンスレベルと栄養素間でばらつきが生じています。
こういった実情を踏まえ、メタ・アナリシスなど、情報の統合が定量的に行われている場合には、基本的には、それを優先的に参考にすることとされました。実際には、それぞれの研究の内容を詳細に検討して、現時点で利用可能な情報で最も信頼度の高い情報を用いるように配慮されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕