「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ライフステージ別の留意点を示しています。ここでは妊婦・授乳婦の留意点を紹介します。
〔妊婦・授乳婦〕
推定平均必要量と推奨量の設定が可能な栄養素については、非妊娠時・非授乳時に、それぞれの値に付加すべき量として食事摂取基準を設定しています。
目安量の設定に留まる栄養素については、原則として胎児の発育に問題ないと想定される日本人妊婦や授乳婦の摂取量の中央値を用いることとして、これらの値が明らかでない場合には、非妊娠時・非授乳時の値を目安量として用いることとしています。
国民健康・栄養調査から求める場合、平成30年・令和元年の2か年分の人口動態統計調査を用いて、「母親の年齢階級(15〜17歳、18〜29歳、30〜49歳)別出生数÷年齢階級(同)別国院健康・栄養調査解析対象者数(女性)」で重み付けをして、年齢区分を調整した摂取量の中央値を算出して、目安量として用いられました。
胎児の成長に伴う蓄積量を考える場合には、妊娠期間の代表値を280日として、1日あたりの量として表されています。妊娠期間を細分化して考える必要がある場合は、妊娠初期(〜13週6日)、妊娠中期(14周0日〜27週6日)、妊娠後期(28週0日〜)に三分割されました。
授乳期には、泌乳量のデータが必要ですが、日本人女性の泌乳量に関する信頼度の高いデータは存在していません。そこで、哺乳量(0.78ℓ/日)を泌乳量として用いることとしています。
耐容上限量については、妊婦・授乳婦における報告が乏しく、算定できなかった栄養素が多かったのですが、これは多量に摂取しても健康被害が生じないことを保障するものではありません。
基本的には当該年齢の非妊婦・非授乳婦における耐容上限量を参考とするのが便宜的であると考えられますが、妊婦における胎児への影響や、授乳婦における母乳への影響は考慮されていないため、耐容上限量を厳しく考えることが望まれます。
しかしながら、この問題に関する科学的根拠は乏しいため、その量的な基準は示されませんでした。
目標量については、妊婦・授乳婦ともに、非妊婦・非授乳婦中女性と同じ基準とされました。しかし、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などが存在し、これらを無視することができないことから、妊婦の目標量を設定する必要性と目標量を適切に設定できるかについて詳細な研究が必要であるとしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕