「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ライフステージ別の留意点を示しています。ここでは乳児、小児、高齢者の留意点を紹介します。
〔乳児〕
出生後6か月未満の乳児では、推定平均必要量や推奨量を決定するための実験はできません。そして、健康な乳児が摂取している母乳の質と量は乳児の栄養状態にとって望ましいものと考えられます。このような理由から、乳児における食事摂取基準は目安量を算定するものとして、具体的には母乳中の栄養素濃度と健康な乳児の母乳摂取量の積としています。
この期間を通じた哺乳量は平均0.78ℓ/日との報告があるため、今回は0.78ℓ/日が基準哺乳量とされました。
6〜11か月の乳児では、母乳(または人工乳)だけでなく、通常の食品の摂取も考えなければなりません。しかし、この集団における知見は乏しく、そこで0〜5か月の乳児と1〜2歳の小児の値から外挿して求められています。
0〜5か月または6〜11か月という、それぞれ1つの月齢区分の中でも、区分内での成長は著しくなっています。したがって、各月齢区分に与えられた値は、あくまでもその月齢区分を代表する一点に過ぎないことに留意して、対象とする乳児の成長に合わせて柔軟に活用することが望まれます。
〔小児〕
食事摂取基準の策定に有用な研究で小児は対象としたものは少なくなっています。そこで十分な資料が存在しない場合には、成人の値から外挿して求めています。
耐容上限量に関しては情報が乏しく、算定できないものが多くなっています。しかし、これは多量に摂取しても健康被害が生じないことを保障するものではないことに十分に注意すべきです。
〔高齢者〕
高齢者では、咀嚼・嚥下能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴う摂取量の低下などが存在します。また、これらは個人差が大きくなっています。さらに、多くの者が何らかの疾患を有しています。そのため、年齢だけでなく、個人の特徴に十分に注意を払うことが必要となります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕