食事摂取基準14 摂取源と摂取期間

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、摂取源と摂取時間について示しています。

摂取源は、食事として経口摂取される通常の食品に含まれるエネルギーと栄養素を対象としています。ただし、耐容上限量については、いわゆる健康食品やサプリメント(以下「通常の食品以外の食品」)由来のエネルギーと栄養素も含むものとしています。

耐容上限量以外の指標については、通常の食品からの摂取を基本としますが、通常の食品のみでは必要量を満たすことが困難なものとして、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性に付加する葉酸に限り、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(folic acid)の摂取について提示しています。

摂取期間は、食事摂取基準は習慣的な摂取量の基準を与えるものであり、それを「1日当たり」を単位として表現したものです。短期間(例えば1日間)の食品の基準を示すものではありません。

これは、栄養素摂取量は日間変動が大きいことに加え、食事摂取基準で扱っている健康障害がエネルギーと栄養素の習慣的な摂取量の過不足によって発生するためです。

栄養素摂取の不足や過剰に伴う健康障害を招くまでに要する期間は、栄養素や健康障害の種類によって大きく異なります。

例えば、ほぼ完全にビタミンB₁を除去した食事を与えると2週間後に血中ビタミンB₁濃度が大きく減少し、欠乏に由来すると考えられる様々な症状が4週間以内に出現したとの報告があり、これは1か月間以内での栄養管理の必要性を示しています。

一方、ナトリウム(食塩)の過剰摂取は加齢に伴う血圧上昇に相関するとの報告があり、これは数十年間にわたる栄養管理の重要性を示しています。このように、健康障害を招くまで、また改善させるまでに要する期間は、栄養素の種類や健康障害の種類によって大きく異なります。

一方、栄養素などの摂取特性、すなわち日間変動の点からも習慣的な摂取の期間を具体的に示すのは困難です。極めて大まかなものですが、エネルギーおよび栄養素の摂取量の日間変動を観察した研究結果に基づくと、ある程度の測定誤差・個人間差を容認して、日間変動が非常に大きい一部の栄養素を除けば、習慣的な摂取を把握するため、または管理するために要する期間はおおむね「1か月間程度」と考えられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕