食事摂取基準5 指標の目的と種類

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、エネルギーの指標と栄養素の指標を設定しています。

〔エネルギーの指標〕
エネルギーについては、エネルギー摂取量の過不足の回避を目的とする指標を設定するとしています。
〔栄養素の指標〕

栄養素の指標は、3つの目的からなる5つの指標で構成されます。

具体的には、摂取不足の回避を目的とする3種類の指標、過剰摂取による健康障害の回避を目的とする指標、生活習慣病の発症予防を目的とする指標から構成されます。

なお、食事摂取基準で扱う生活習慣病は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病を基本としていますが、我が国において大きな健康課題であり、栄養素との関連が明らかであるとともに栄養疫学的に十分な科学的根拠が存在する場合には、その他の疾患も適宜含めることとしています。

また、脳血管疾患と虚血性心疾患は、生活習慣病の重症化に伴って生じるものと考え、重症化予防の観点から扱うこととしています。

栄養不足の回避を目的として、「推定平均必要量」が設定されています。推定平均必要量は、半数の者が必要量を満たす量のことです。推定平均必要量を補助する目的で「推奨量」を設定していて、これはほとんどの者が充足している量を指しています。

十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」が設定されています。目安量は、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどありません。

過剰摂取による健康障害の回避を目的として「耐容上限値」が設定されていますが、十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定されていません。

その一方で、生活習慣病の発症予防を目的として食事摂取基準を設定する必要のない栄養素が存在しています。しかしながら、そのための方法論に関する議論は十分とは言えません。そこで、これらの栄養素に関しては、「生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」として「目標量」が設定されています。

なお、生活習慣病の重症化予防、フレイル予防を目的として摂取量の基準を設定できる栄養素については、発症予防を目的とした量(目標量)とは区別して示されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕