「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、栄養素の指標を設定しています。ここでは栄養素の指標の各項目について紹介します。
〔推定平均必要量〕
推定平均必要量は、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて母集団(例えば30〜49歳の男性)における必要量の平均値の推定値を示すものです。つまり、当該集団に属する50%の者が必要量を満たす(と同時に、50%の者が必要量を満たさない)と推定される摂取量として定義されます。
推定平均必要量は、摂取不足の回避が目的ですが、ここでいう「不足」とは必ずしも単独の栄養素の摂取量が不十分であることによる欠乏症が生じることだけを意味する者ではなく、その定義は栄養素によって異なります。
最近では個々の栄養素の摂取量や生体内での栄養素の機能状態などを示す生体指標(血液中や尿中で測定される物質などでバイオマーカーとも呼ばれる)が複数使用可能となっていて、各栄養素の摂取量の変動や整理機能に特異的な生体指標に基づいた推定平均必要量の見直しも行われています。
なお、食事摂取基準において、原則として「欠乏」とは栄養素の体内量が必要量を下回ることを要因として不可避の病態が現れる状態を指していて、「不足」とは栄養素の摂取量が必要量を下回ることを要因として、ある病態のリスクが生じる状態を指しています。
生体指標は直接的に欠乏後の発症率と関連する場合もありますが、特に「不足」の指標として用いる場合には疾病発症リスクを正確に見積もることは難しい場合が多くなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕