食事摂取基準8 栄養素の指標その2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、栄養素の指標を設定しています。ここでは栄養素の指標の各項目について紹介します。

〔推奨量〕
推奨量は、ある対象集団において測定された必要量の分布に基づいて母集団に属するほとんどの者(97〜98%)が充足している量として定義されます。推奨量は推定平均必要量が与えられる栄養素に対して設定され、推定平均必要量を用いて算出されます。

推奨量は、実験などにおいて観察された必要量の個人間変動の標準偏差を、母集団における必要量の個人間変動の標準偏差の推定値として用いることによって、理論的には「推定必要量の平均値+2×推定必要量の標準偏差」として算出されます。

しかし、実際には推定必要量の標準偏差が実験から正確に与えられることは稀なことで、そのために多くの場合、推定値が用いられています。
そのため、「推奨量=推定平均必要量×(1+2×変動係数)=推定平均必要量×推奨量算定係数」として推奨量が求められています。

〔目安量〕
特定の集団における、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量として定義されます。

目安量は、十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量が算定できない場合に算定されるものです。実際には特定の集団において不足状態を示す者がほとんど観察されない量として与えられ、基本的には健康な多数の者を対象として、栄養素摂取量を観察した疫学的研究によって得られます。

目安量は、次の3つの概念のいずれかに基づく値とされます。どの概念に基づくものであるかは、栄養素や性・年齢区分によって異なります。

1 特定の集団において、生体指標などを用いた健康状態の確認と栄養素摂取量の調査を同時に行い、その結果から不足状態を示す者がほとんど存在しない摂取量を推測して、その値を用いる場合:対象集団で不足状態を示す者がほとんど存在しない場合には栄養素摂取量の中央値を用います。

2 生体指標などを用いた健康状態の確認ができないものの、健康な日本人を中心として構成されている集団の代表的な栄養素摂取量の分布が得られる場合:栄養素摂取量の中央値を用います。

3 母乳で保育されている健康な乳児の摂取量に基づく場合:母乳中の栄養素濃度と哺乳量との積を用います。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕