30年以上も世界一の長寿を誇っていた日本が、香港に抜かれて男女平均が世界2位となりました。日本の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳と過去最高を更新しましたが、香港の延びは急速で平均寿命は男子が81.32歳、女性が87.34歳となりました。そのことが発表されてからテレビ番組で香港の長寿の秘訣が取り上げられる機会が増え、香港で健康を維持している元気な高齢者の運動と食生活が紹介されています。
その内容を見ていて気になったのは、多くの番組で太極拳を楽しんでいる人が紹介され、肉類が多い食事をして、漢方薬を取っていることで、確かに、これは長寿の秘訣であることは正しいのでしょうが、これは香港だけに限った話ではありません。中国人が当たり前にやっていることで、香港と同じものを食べている中国人の平均寿命は男性が44位、女性が80位、男女平均で53位です。
香港が中国本土よりも優れているのは、貧富の差が少なく、教育レベルも高く、漢方薬の消費量の多さがあげられています。食事と漢方を大切にしていることから“医食同源”があげられることも多くなっています。“医食同源”を最大の原因としている番組もありました。その指摘は当たっていると思いますが、問題は“医食同源”という言葉で、そのような言葉は中国文化圏にはありません。中国にあるのは“薬食同源”です。食が医というより、食が薬という考えのほうがしっくりときます。
これに加えて、坂道が多いことによる歩行数の多さ、高齢者を敬う風潮の強さなどがあげられていますが、それだけでなく特徴的に食べているものがあるはずと、その理由探しが行われてきました。
ある番組が、太極拳の帰りに飲茶を楽しんでいた高齢者の集団がデザートとしてナッツ類を持ち込みで食べていました。これこそが健康長寿の秘訣であると長寿科学の研究者がコメントしていましたが、その番組の後で、他局のディレクターから「香港の人たちの長寿食であることは間違いないですか」との問い合わせがありました。
ナッツ類は中華料理にも多く使われますが、確かに香港では多く食べられています。塩分の摂取量が多めになる心配がありますが、肉類を食べすぎるよりは健康度を高める可能性があります。ナッツ類を多く食べているのが理由なのか、他のものを食べている上にナッツ類を食べていることがよいのか、そこのところはわかりません。中国本土に比べると空気や水の環境がよく、喫煙率が低いこともあげられます。
要は、原因は一つや二つだけでなく、いろいろなことが重なって好結果を生み出しているのであって、これが原因だと決めつけて、そればかりを食べて安心するようなことではいけないと講習で伝えています。