高齢者の問題運転は発達障害のせいかもしれない

高齢者の危険運転や問題運転は、認知機能の低下のせいとされています。そのために、75歳を過ぎたら運転免許の更新には認知機能検査が義務づけられています。記憶力と判断力の検査で、安全に運転をするためには必要であることは認めても、それだけを確認することで安全な運転をすることが保証されるのかというと、完全に同意することは難しいかもしれません。
認知機能については、認知症のほかに、その予備群とされる軽度認知障害があります。どちらも記憶力と判断力を確認する内容といっても、主には記憶力のほうであって、注意力や一瞬の判断をして、その次の行動に起こせるかは認知機能だけではわかりません。つまり、飛び出しがあったらブレーキを踏む、飛び出す可能性がある通行者や自転車などを見たときにスピードを落とす、いつでもブレーキをかけられるように準備するという実際の交通事故を予防するために運転技術につながるかというと、そこは保証することはできません。
認知機能が正常であっても、年齢を重ねてきたときに、急に運転が危険になる、乱暴な運転をするようになるということがあります。その原因を探っていて、実は発達障害であることがわかった、高齢者になるまでの長い期間に気づくことがなかったということがあります。
発達障害には自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害などがありますが、この中で問題運転と関係してくるのは注意欠如・多動性障害です。注意力が散漫になるだけでなく、衝動性が抑えられなくなって、急に乱暴な運転をするということも起こります。割り込みは無理かもしれないというときに、割り込みを諦めるのではなくてアクセルを踏み込む、青信号の点滅から黄信号になっているのに交差点に入る、しかも時間がかかる右折をするといったことです。
発達障害というと子どもに起こるものというのは間違いで大人になってから起こることについては知られてきましたが、高齢者になって脳の機能が低下してきて、脳のブレーキがかかりにくくなってくると急に発達障害の特性が起こるということにもなります。これまで高齢者の発達障害は考えられることはなく、そもそも高齢者が子どもだった時代に発達障害という言葉はなくて、当然のように治療も改善のための支援も行われていなかったのです。