ウォーキングをすると筋肉が増えるので、新型コロナウイルスに限らず、運動ができない、外出を控えなければならないという状況では、解除された段階で歩こうという人が増えます。日本メディカルダイエット支援機構にも、高齢者のためのウォーキングのオファーがありますが、ただ歩けば筋肉が戻る、筋肉が増えると思っている人が少なくありません。1日1万歩を歩くことを推奨している研究機関で、実際に1万歩を歩いている人で筋肉量について調べていますが、残念ながらほとんど増えていません。増えているのは、あまりに運動が足りなかった人だけで、普通に運動をしている人、それなりの時間をかけて距離を稼いでいる人でも期待するほどの筋肉は増えていません。
筋肉量を増やすには、ウォーキングの前に筋肉トレーニングをしてから歩くことで結果は得られます。しかし、かなりの筋肉刺激が必要になってきます。筋肉トレーニングをすると刺激を受けた筋肉には多くの酸素が取り込まれます。多くの酸素を使って、筋肉の中でエネルギーを作り出すためですが、筋肉に酸素が多い状態でウォーキングをすると、歩くことによるブドウ糖と脂肪酸の燃焼が大きく進められます。
しかし、ウォーキングに健康効果を期待する高齢者の場合には、相当の筋肉トレーニングをした後でないと筋肉量を増やすところまでは達することができません。身体にかかる負荷を示すのには最大酸素摂取量との比較が使われます。最大酸素摂取量というのは全力で走って、これ以上に力を出すことは不可能という状態で体内に取り込まれる酸素の量を指しています。多くの酸素を取り込むということは、それだけ多くのエネルギーを作り出しているということで、最大酸素摂取量が指標として使われています。
筋肉量を増やすためには、最大酸素摂取量(100%)に対して70%の摂取量が必要になります。運動をやり慣れている人は最大酸素摂取量が高まっているので、70%の達成率というと、かなりの負荷がかかる運動となります。走っても達しないことがあります。ところが、運動をやり慣れていない高齢者の場合には早歩きをしただけでも70%に達します。この70%に達した段階で、成長ホルモンが多く分泌され、筋肉を増やすサテライト(衛星)細胞が増えていきます。
高齢者では普通歩行で30%くらいの酸素摂取量になり、これが適度に脂肪を燃焼させるのによい負荷となります。そして、腕を大きく振って、歩幅を広げて、元気にスタスタと歩くという、時速にして5.5kmを超えるスピードでの歩行では70%に達することができます。といっても、ずっと70%の速歩を続けることは、運動習慣がない人にはきついことです。そこで指導されるのは、普通歩行を3分間やった後に、速歩を3分間やって、また普通歩行3分間、速歩を3分間、そして最後に3分間の普通歩行を実施するインターバルウォーキングです。
これで合計で15分となり、1週間に60分、つまり週に4回のインターバルウォーキングを行うことがすすめられます。