魚の脂肪なら多く摂っても大丈夫なのか

肉の摂りすぎは身体によくないこと、魚は身体によいものという印象が強すぎるのか、健康のためにといって魚をたくさん食べる人がいます。その食べる魚が油脂がたっぷりと含まれているトロのような魚になると、本当に身体によいのか、かえって身体によくないことになるのではないかとの不安も湧いてきます。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』(2015年版)によると脂質の摂取量は全エネルギー量のうち20〜30%とされています。思ったよりも多いという印象ですが、そのうち「飽和脂肪酸は7%以下」という目標も示されています。動物性脂肪の中でも食肉に多い飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高めるので減らすようにして、同じ動物性脂肪であっても魚や植物油に多い不飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを低くしてくれるので積極的に摂るべき脂肪酸だということが知られています。
それなら魚の脂肪酸をたくさん摂ろうと考えるのもわからないではありませんが、エネルギー量ということでは牛肉の脂肪も秋刀魚の脂肪も1g当たり約9kcalであることに変わりはありません。30%までという上限が定められているので、それを超えるほど摂ったら、余分な脂肪として血液中の中性脂肪値を高めたり、脂肪細胞の中に蓄積される脂肪(中性脂肪)を増やして太ることになります。
30%というと案外と多いように感じるのは、これがエネルギー比だからです。糖質とたんぱく質のエネルギー量は1g当たり約4kcalです。脂質は2倍以上のエネルギー量があるので、分量で考える場合には半分以下に減らさないといけないのです。
『日本人の食事摂取基準』(2015年版)では20〜30%という基準ですが、2010年版までは上限は25%でした。この基準には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の区別はなく、2015年版から5%増えたのと同時に飽和脂肪酸の上限目標が加わりました。当時の25%や現在の30%に近づける必要はなくて、下限の20%であっても健康面の問題はないというのが、この基準の主旨です。無理に多くの量を摂る必要はなくて、肉を食べる回数を減らして、その分だけ魚を食べるようにするといったことでも対応できるということです。
脂が乗ったマグロの大トロやトロサーモンはおいしく感じるので、これをたくさん食べるための口実に不飽和脂肪酸の効能(血液サラサラなど)を使っていた人は、そろそろ通じなくなってきていることを感じて欲しいところです。