人間は少ない種類の栄養素だけで生きていけるようにはなっていません。ビタミンだけでも代謝には、すべての種類が必要となります。糖質がブドウ糖に変化するときには特に必要はないのですが、ブドウ糖がアセチルCoAという代謝物質に変化するときにはビタミンB₁、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸が必要になります。脂質が脂肪酸に変化するときにはビオチンが、脂肪酸が脂質に戻るどきにはナイアシンが必要になります。そして、脂肪酸がアセチルCoAに変化するときにはビタミンB₂、ナイアシン、パントテン酸が必要になります。たんぱく質がアミノ酸に変化するときにはナイアシンが、アミノ酸がたんぱく質に戻るときにはビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸が必要になります。アミノ酸がアセチルCoAに変化するときにはビタミンB₆が必要になります。
ビタミンだけでも、多くの種類が含まれている食品はないので、少ない種類の食品を食べて、健康を保つことはできないのです。できるだけ多くの食品を食べて、健康を維持しようということで、「1日に30食品を食べよう」と言われたことがあります。これは当時の健康づくりのキャッチフレーズの「1日に30分の運動の時間を作ろう」、「夕食から寝るまでの間に30分のリラックス時間を作ろう」というのに合わせて、当初は1回の食事に30分をかけようということも考えられましたが、実際には「1日に30食品」というキャッチフレーズになりました。
今では言われなくなったのは、国民健康・栄養調査の結果から1日に17食品以上を食べていれば栄養バランスが取れていることがわかったからです。それでも、できるだけ多くの食品を食べて、多くの栄養素を摂ろうという人はいますが、そんなのは簡単だという人もいます。七味唐辛子で7種類、合わせ味噌で2種類、2色ゴマで2種類……などと言ったら顰蹙を買ってしまいそうですが、そんなことを栄養の話をするときの枕(落語の前振りのことで、本題に入る前の解説)として使っているのは、実は日本メディカルダイエット支援機構の理事長です。

