100kcal栄養学9 80kcal単位では“戦後は終わっていない”

第二次世界大戦後の昭和20~30年代は食料などで物価が高く、肥料や飼料が少ないことから、野菜、果物、卵などのサイズが小さくなり、魚や肉の一切れの量も少なくなっていました。

こういった実態を受けて、昭和29年(1954年)に開催された第1回日本栄養改善学会で、「現時点での食生活では食品の目安量は100kcalより80kcalに近い」との発表がありました。そして、食事療法が特に重要である糖尿病などで80kcalを目安とする食事指導が検討されました。

発表者の荒井光雄先生は、私が知り合ったときには集団給食の専門家で、後に私が事務局を務めた産業栄養指導者会の初代会長でした。

昭和40年(1965年)には、80kcal単位の食事では理解しにくいことから、十進法を採用して、「80kcal=1単位」もしくは「80kcal=1点」として採用することとなりました。

80kcal単位の目安量は、戦後の食糧難を背景に生まれたものであり、肥料や飼料の不足、1食分の食品の小型化などの影響がありました。それまで採用されてきた100kcal単位の栄養学に対して、戦後の緊急措置として始められたものです。

このことは荒井光雄先生から直接うかがいました。80kcalが広く知られるきっかけとなったのは日本糖尿病学会や栄養専門学校などが採用したからだということです。

戦後が終わってから久しい現在でも80kcalが目安量となっていることに違和感を抱く意見も少なくありません。現在の食品の目安量は100kcalに近く、100kcal単位で考えたほうが食品を身近に感じやすく、理解しやすい単位となっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕