発達栄養41 食物繊維の性質

食物繊維は、単糖が鎖状に結合したもので、「消化酵素では消化されない食品中の難消化性成分の総称」と定義されています。炭水化物から食物繊維を除いたものが、エネルギー代謝に必要な糖質です。
食物繊維は食べ物のカスとして栄養素としては評価されなかった時代もありますが、腸内環境を改善する機能が注目され、現在では糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに次ぐ第6の栄養素とも呼ばれています。
食物繊維は、水に溶けない性質の不溶性食物繊維と、水を吸って膨らむ性質がある水溶性食物繊維に分類されます。
不溶性食物繊維は野菜や穀類、豆類などに多く含まれ、硬く、ボソボソした食感があります。水溶性食物繊維はキノコ、海藻、果物(ペクチン)に多く含まれています。水を吸って膨らむと余分な脂肪や糖質の一部を吸着して吸収されないようにする性質があります。以前はコンニャクも水溶性食物繊維とされていましたが、凝固剤を用いて固形にしたコンニャクは不溶性食物繊維と同じ性質になり、咀嚼して嚥下したままの形で腸管を通過して、水溶性食物繊維のメリットが得られなくなります。
不溶性食物繊維は便通をよくし、大腸内に有害物質がとどまる時間を短くするとともに、腸内で腐敗を進める腸内細菌の悪玉菌を減らし、腐敗によって発生する毒素(有害物質)を減らす作用があります。また、大腸内で発生した毒素による大腸壁への刺激を減らすことから、大腸がんの発生を抑える効果があると説明されています。
日本人は終戦後、食生活が大きく変わり、徐々に食事の洋風化が進んで肉食が増え、それが大腸がんを増やす結果となりました。悪玉菌を増やす肉食が増えた分だけ、善玉菌を増やしやすい食物繊維を多く摂って、便通を改善することが解決の第一の手段といえます。
食物繊維の中でも摂取量の不足しがちなものは水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維には、便を軟らかくして便通よくする、大腸の粘膜を保護する、食べたものが胃から腸に運ばれる時間を長くして血糖値の急上昇を抑える、胃の中で水分を吸って膨らむことで少ない量で満腹感を得やすくする、有害物や脂肪などを包み込んで吸収されにくくする、といった多くの働きがあります。水溶性食物繊維が多く含まれる海藻、キノコは伝統的な日本食に多く使われる食材ですが、現在の食生活では意識しないと摂りにくいものとなっています。