生活習慣病の予防にも改善にも、まずは優先されるのは食事と運動で、治療レベルまで進んだ人には栄養指導と運動指導が行われます。いわゆる食事療法と運動療法ですが、これは医師から重要性が説明され、積極的に行うように言われたとしても、具体的な方法までは言われないのが普通のことです。
というのは、医師が食事指導をしても運動指導をしても保険点数がつかないからです。食事指導で保険点数がつくのは管理栄養士だけで、運動療法で保険点数がつくのは理学療法士や作業療法士だけです。医師が、どんなに頑張って栄養学を勉強して、栄養について指導をしても、法律的には栄養指導ではなくて、保険点数がつかない雑談レベルとされてしまいます。
だから、勉強をしていないまま栄養については充分とはいえない知識のままで話すことがあり、運動についても個人の状態に合わせた方法を指導するのではなくて、病気別の注意点を告げて、歩くようにすすめるくらいで終わることもあります。
糖尿病を例にあげると、血糖値とヘモグロビンA1c値が高ければ糖尿病と診断されて医薬品(血糖降下剤)が処方されます。これで診断と指導が終わったように感じるかもしれませんが、糖尿病治療に使われる医薬品は、食事療法と運動療法が前提となっています。食事療法と運動療法をやってみて、それで血糖値とヘモグロビンA1c値の変化を見て、今後の治療方針が決められるのが基本中の基本です。
しかし、その基本中の基本であるはずの食事療法と運動療法をされないまま医薬品だけを出されている患者が数多くいます。病院であれば管理栄養士も理学療法士などもいるので、指導を受けることは可能です。ところが、クリニックでは医師以外の専門家はいないところがあり、何も指導をされないまま医薬品を使うだけということも少なくありません。これでは、効果が充分に得られない治療でしかない、と批判されても仕方がありません。
これに対応するための栄養と運動の指導を、医療機関以外で行い、そこに医療機関が協力をするという形があって然るべきで、それを期待して栄養と運動の講習を地域で実施しているのですが、いまだに期待どおりにはなっていないのが実情です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)