日本人の平均寿命が10年ぶりに縮んで、男性が81.47歳、女性が87.57歳になったと報道されたのは2022年7月29日のことでした。10年前というと東日本大震災の影響があった年で、今回の結果に影響したのは新型コロナウイルスです。
このデータは、厚生労働省の「令和3年簡易生命表の概要」によるものですが、簡易生命表というのは、1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命によって表したものです。
一般に平均寿命と呼ばれているものは、0歳児の平均余命であって、例えば65歳の男性が、あと21.47年生きられるということではありません。平均余命は主な年齢ごとに計算されていて、65歳の項目を見ると19.85年となっています。計算上の余命とは1.62年と大きな差ではないようですが、あくまで経済や生活環境、衛生環境などの死亡に影響する状況が変わらないという前提での話であって、前提が崩れるようなことがあったら、この先の20年ほどの期間は保証されるわけではありません。
思ってもみないことが起こることは「万が一」と表現されますが、1万日は27年ちょっとの期間で、27年前の1995年に何があったのか、そのときから社会的に何が変化したのかを見ていくと、そろそろ万が一のことが起こってもおかしくないことがわかります。
1995年はバブル経済が崩壊した直後で、銀行が倒産する、不良債権が拡大する、地価と住宅価格が下落する、日本の格付けが低下する、雇用が抑制されるという万が一の出来事が続きました。団塊の世代(1947〜1949年生まれ)の子どもの団塊ジュニア(1971〜1974年生まれ)は、1995年には21〜24歳で、まさに就職をする年齢で就職先が崩壊するような厳しい世の中に放り込まれることになりました。
「実質給与が30年間も上がっていないのは日本だけ」と言われますが、その洗礼を受けたのも団塊ジュニアでした。団塊ジュニアは毎年200万人も生まれた世代で、その子ども世代も大きく増えることが期待されました。しかし、生活が苦しい中で結婚、出産、子育ては難しく、第三次出産ブームは起こりませんでした。
この世代が新たな時代の担い手になることが期待されていたものの、それは儚い希望で終わり、日本の競争力を大きく低下させる結果となっています。国の成長を支えるのも介護社会を支えるのも人材ですが、その人材が不足している時代では、これまでの常識をスケール(物差し)にしていたのでは、さらに崩壊に向かって進みかねないという恐怖心があります。
これを克服していくために何をしなければならないのか、そのことを真剣に考え、次の世界に向かってスタートを切らなければならないタイミングに足を踏み入れています。それを認識して、意識を変えることから、次の世代への案内役の務めが始まるのではないかと考えています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)