発達障害の学習障害は、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害と並ぶ三大発達障害とされています。自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害については、脳のセロトニン不足が影響していることは前に紹介しましたが、学習障害についてもセロトニン不足の影響が指摘されています。
セロトニンは脳内の神経伝達物質で、ドーパミン、アドレナリンを制御して精神を安定させる働きがあります。また、セロトニンには脳の扁桃体に働きかけて恐怖や不安といったストレスを軽減させる作用はあります。セロトニンが不足するとドーパミンとアドレナリンのコントロールが不安定になり、ストレスのコントロールができにくくなり、意欲や集中力がなくなる、気分が優れない、疲れやすい、眠れないといった状態が起こるようになります。
神経伝達は、一つの神経細胞から別の神経細胞に神経伝達物質を使って伝えられていきます。神経伝達物質が不足すると、それだけ情報の伝達が遅れることになります。正常な発達では前頭前野の神経伝達が成熟することで思考、学習、注意、意欲、創造などの精神機能の調整が行われています。
発達障害は神経伝達のネットワークの機能不全が指摘されますが、一般には電線のような働きをする神経の配線に異常があるように理解されることがあります。これもあるとしても、それに加えて神経伝達物質のセロトニンの不足から伝達がスムーズにいかないことも大きな理由と考えられています。
セロトニンは遺伝的な要素もあるものの、環境因子のほうが大きく、セロトニンの材料となる必須アミノ酸が不足することによって、脳内で減少していくことが知られています。
セロトニンが増えると興奮作用があるドーパミンとアドレナリンの働きが抑えられ、セロトニンが減るとドーパミンとアドレナリンの働きが高まるというバランスになっています。セロトニンが減っているために、興奮しやすくなり、それが学習障害にも影響を与えるという結果につながっているということです。