高齢になると筋肉量が減り、活動量が減っていきますが、この状態を「フレイル」と表現して、高齢になっても活動量が減らないようにするための対策が行われています。
フレイルの語源となっているのは英語の“Frailty”(フレイルティ)で、日本語では“虚弱”“脆弱”“老衰”となります。老衰は、日本人の死因の3位になっています(1位:悪性新生物=がん、2位:心疾患=心臓病)。
老衰とは、どんな状態かというと、厚生労働省の「死亡診断書 記入マニュアル」によると、「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」とされています。特に死因につながるような病気(がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎など)や障害がないのに、年齢によって自然に亡くなることを指しています。
これは超高齢社会(高齢化率28.9%:令和4年)を反映したもので、肺炎が死因の5位になっているのも、高齢者が急激に増えてきたことと関係しています。フレイルの行き着く先が老衰による死亡ということを考えると、フレイル対策は健康寿命を延ばすための重要な項目となります。
フレイルと名付けたのは日本老年医学会(2014年)で、高齢者で起こりやすいFrailtyも正しく介入(生活面の手助け)をすれば改善できるということを強調するために、「フレイル」を共通言語として使うことを提唱しました。
その介入の第一は筋肉運動で、高齢になってからでは間に合わないので、少なくとも50代からは筋肉を増やすための運動や食事などを心がける“貯筋”をすすめています。貯金ならぬ“貯筋”が多ければ、筋肉量が減りすぎて機能の低下を防ぐことができるという発想です。
筋肉量を増やすためには、筋肉に刺激を与えることが必要ですが、歩くことくらいでは筋肉を増やすほどの運動にはならないと考えられてきました。ところが、高齢者の場合には、運動量が全体的に減少していることから、早歩きをするだけで筋肉が強く刺激されて、筋肉量が増えることがわかってきました。特に効果があるのは速歩と普通歩行を繰り返すインターバルウォーキングで、その方法については別の機会に紹介させてもらいます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)