発達栄養63 自律神経の調整のために摂るべきもの

学校の授業は、自律神経の交感神経の働きが盛んになる時間帯に実施されています。これは自律神経の交感神経の働きが日中に盛んになり、夕方以降は副交感神経の働きのほうが盛んになって、交感神経の働きが抑えられるという通常のリズムを基本とした考えです。

ところが、発達障害の人では、大人も子どもも関係なく、日が昇っても交感神経優勢に切り替わらず、そのために通常の起床時間になっても起きられない、起きられても脳の機能が高まらずに学習にも積極的に取り組めないということが起こります。

学習時間に交感神経の働きを整えるためには、しっかりと熟睡すること、そのために早寝をすること、運動をすること、夕方以降は交感神経を刺激するブルーライトを避けるためにスマホもパソコンもテレビも避けること、といったアドバイスがされます。これを実現させたとしても、基本的な身体機能を調整するための栄養が摂取できていないのでは、なかなか続かないということにもなります。

自律神経の調整のために必要なホルモンとしてセロトニンがあげられます。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれる脳内ホルモンで、感情や精神面、睡眠などの機能に深く関わっている神経伝達物質です。セロトニンは脳が緊張やストレスを感じると多く分泌されます。この分泌が不足していると、緊張もストレスも続き、興奮状態から解放されないために交感神経の働きが続くことになります。

セロトニンが分泌されると神経を興奮させるノルアドレナリン、快感を増幅させるドーパミンといったホルモンの働きを抑えて、自律神経の調整を整えるように作用します。ストレスがたまった状態で、ぬるめの温度で入浴したり、軽い体操をするとリラックスができるのはセロトニンが増えた結果です。

セロトニンは脳内と腸内で作られていますが、材料がなければ作ることができません。セロトニンの材料となるのは必須アミノ酸(体内で合成されないために食品から摂る必要があるアミノ酸)のトリプトファンです。トリプトファンが直接的に効果を発揮するのではなくて、トリプトファンはセロトニンとなったあとに、睡眠を促進するメラトニンに変化します。このメラトニンによって睡眠の質が高まり、自律神経が調整されるようなります。

トリプトファンは大豆製品(納豆、豆腐、味噌など)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)のほかに、バナナ、卵、ピーナッツ、ごまにも含まれています。肉や魚にもトリプトファンは含まれているものの、動物性たんぱく質に含まれるBCAA(必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシン)はトリプトファンの脳内への取り込みを阻害する作用があるため、植物性食品から多めに摂ることがすすめられます。