健康あない人10 基本を知らない医師の栄養情報は恐ろしい

食事で健康を維持して、病気を予防するのは健康づくりの基本中の基本です。テレビの健康に関わる番組を見ると、医師が食事・栄養についてコメントしているシーンをよく目にします。医師は栄養にも詳しいのだろうな、という認識(想像?)のうえで、そのコメントを拝聴している人も多いかと思います。

医師こそは健康の案内人にふさわしいと思われがちですが、医師が職務として栄養指導をすることはありません。というのは、栄養指導をして保険点数がつくのは、つまり収入が得られるのは医療機関の管理栄養士だけだからです。医師は、いくら頑張って病気の改善のために栄養指導をしても一銭の稼ぎにもならない医療制度となっているのです。

管理栄養士でなければ保険点数がつかない制度を国に働きかけて構築したのは、日本栄養士会の理事長を務めていた管理栄養士で、当時は国立病院の栄養士のトップでもありました。その管理栄養士が、私が学んだ臨床栄養の師匠で、後に師匠が設立した病院栄養管理の研究所では、私は主任研究員を務めていました。だから、医師の栄養への関心の低さの背景をよく聞かされていました。

それでも患者のために一生懸命に栄養学を学んでいる医師がいるのも事実ですが、大学で栄養学を学びたいと思っても不可能ということもあります。医師養成大学は82校ありますが、栄養学講座が設けられているのは23校だけです。それも学べるのは栄養の不足による疾病の関係がほとんどで、必須科目にもなっていません。

だから、栄養学について積極的に語っている医師は、大学で学んだかどうかは関係なく、卒業後に一生懸命に学んだ結果ということが考えられます。国立病院や大学病院などであれば、医師も現場で管理栄養士の手助けもあって栄養学を学ぶことはできるのでしょうが、そのような環境にないと独学で学ぶことになります。

メディアで有名になった医師の書籍を書店で目にすることもありますが、栄養の部分を見てみると、独自の理論でアレンジした栄養学を述べる医師もいて、基本を知らないこともあって、「こんなことを書いて大丈夫か」と思えるものが多すぎます。健康の案内人になれる医師は、それほど多くはないのです。

だから、医師に頼るのではなく、自分たちの経験を活かした形で栄養学を学び、多くの人に役立つ健康の案内人になってほしいのです。そして、私は、その案内人のための案内人になれればと思って、情報収集・分析・研究に励んでいます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)