神経の働きは、全身に張り巡らされている神経細胞の中を神経伝達物質が通化することで盛んになっています。神経細胞は場所によって長さが数mmから1cmが通常です。最も長いのは大脳から脊髄まで伸びている神経細胞で、50cmほどの長さがあります。神経細胞の端にはシナプスという神経伝達物質を受け渡しする部分があり、シナプスは離れています。この離れた間を神経伝達物質が放出されて、もう一方のシナプスが受け取って、そこから先に情報を伝えていきます。
神経伝達物質の役割を果たしているのはカルシウムとアセチルコリンです。カルシウムは一般には骨や歯を構成するミネラルと認識されていますが、神経伝達には欠かせない成分です。骨の中に蓄積されていて、血液中で不足すると骨の中からカルシウムが溶け出て、これら神経細胞にも補われます。そのために神経伝達物質として不足することはないのですが、食事からの不足状態が長く続くと、骨の中の蓄積量が減って、神経伝達にも影響が出るようになります。
カルシウムの摂取量は、厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果によると、多くの年齢で必要量に対して30%以上も不足しています。カルシウムは牛乳・乳製品、魚介類、大豆製品、野菜(小松菜、ほうれん草、モロヘイヤなど)に多く含まれています。乳製品が苦手な子どもも多く、肉は食べられても魚は食べられない、緑黄色野菜が食べられないという子どもも少なくはないので、どうしても不足しがちです。
もう一つの重要な神経伝達物質のアセチルコリンはホスファチジルコリンから作られるものですが、これは細胞膜の構成成分で、レシチンとも呼ばれています。レシチンは大豆や卵黄に多く含まれていますが、含有量は圧倒的に卵黄のほうが多くなっています。しかし、大豆にはアミノ酸のチロシンが含まれていて、これはノルアドレナリンやドーパミンといった神経細胞を活性化させる働きがあります。
これにもう一つ加えるべき栄養素としてDHA(ドコサヘキサエン酸)があげられます。DHAは青背魚(サバ、イワシなど)に多く含まれている不飽和脂肪酸で、神経細胞のシナプスの働きを高め、アセチルコリンを活性化させることが確認されています。「おさかな天国」という魚売り場で流されていた歌の“頭がよくなる”というのは、DHAの機能を指していたのです。