ダイエットを始めると、腸内環境に変化が起こってきます。中でも食事の量を変えたときには、食べたものの結果として起こる便通が変わるのは当然のことです。この指導を初めて経験したのは、スポーツ選手の体重コントロールチームに参加したときのことで、対象者が若い女性であったので、生活を変えるだけでも腸内環境に影響を与えやすいからです。
そのときのチームに参加していたのは栄養科学、運動科学の専門家が中心で、エネルギーコントロールとエネルギー代謝には詳しい人たちでしたが、腸内環境については今ほど広くは研究されていなかった時期だけに的確に応えられる人がいなくて、お鉢が回ってきてしまいました。
食事の量が減ると、その中に入っている食物繊維が少なくなりがちです。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大きく分かれます。野菜の葉や根などに多く含まれている不溶性食物繊維は腸壁を指摘して便通を促進するとともに、便の量を増やすためにも必要です。ダイエットをしても減らすのは糖質と脂質が中心になるので、不溶性食物繊維が含まれる野菜類、根菜類などは減らさないのが原則なのに、減量をすると減る傾向があります。
もう一つの水溶性食物繊維は、海藻、きのこ、果物などに多く、水分を吸って膨らみ、便を柔らかくする作用があります。胃で余分となった糖質や脂質の一部を吸着して吸収されにくくする作用もあります。また、粘度が高いために糖質から分解されたブドウ糖が、ゆっくりと胃から小腸に運ばれることから血糖値の上昇を遅らせることができます。
ブドウ糖が多く、早く吸収されると血糖値が急上昇して、膵臓からインスリンが多く分泌されます。インスリンは取り込みのホルモンで、ブドウ糖を筋肉に取り込み、肝臓でのグリコーゲンと中性脂肪の合成を進めます。グリコーゲンはブドウ糖が結合した保存型の糖質で、筋肉に多く蓄積されます。中性脂肪は脂肪細胞の中に蓄積されます。
水溶性食物繊維は普通でも足りないので、食事量が減っても減らさない、むしろ増やさなければならないものです。しかし、減量をしているときには減る傾向があり、それが便通にも影響を与えてしまうのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)