エネルギー代謝38 AMPキナーゼの活用

有酸素運動は、酸素を取り込みながらエネルギー代謝を盛んにしていく運動です。細胞内のエネルギー産生器官のミトコンドリアのTCA回路では酸素を用いて、ブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として代謝が行われています。

TCA回路でブドウ糖と脂肪酸を代謝した結果として、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られます。ATPからリン酸が1個離れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。身体に負荷が高まるウォーキングをするとADPから、さらにリン酸が1個離れてAMP(アデノシン一リン酸)になりますが、そのときにAMPキナーゼという酵素が発生します。

AMPキナーゼには、細胞にブドウ糖を取り込む働きをするGLUT4(グルコース輸送体)が細胞膜に移動して、ブドウ糖が効果的に取り込ませる働きがあります。これによって多くのエネルギーが発生するようになります。

通常はGLUT4を移動させて、ブドウ糖を細胞に取り込む働きをさせているのは、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンです。インスリンが不足すると全身の細胞へのブドウ糖の取り込みが低下して、血糖値(血液中のブドウ糖の値)が下がりにくくなります。

ところが、有酸素運動をすると、このメカニズムによって血糖値が降下します。血糖値が降下すると、肝臓で脂肪合成するインスリンの分泌量が低下するために血液中の中性脂肪の減少にもつながります。

糖尿病になると、食事療法とともに運動療法が指導されますが、これは運動によってAMPキナーゼを多く発生させて、インスリンが不足した状態でも血糖値が下げられるようにするという意味もあるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)