L‐カルニチンがサプリメントの素材にも使われるようになり、代謝促進の効果が期待されたときに、効果に疑問が抱かれるような発表がありました。それはL‐カルニチンをサプリメントとして使っても、脂肪のエネルギー代謝が高まらないという海外の研究報告でした。サプリメントや健康食品に否定的な医師などが、これを示して役に立たないというようなことを言われたことがあります。
しかし、海外の実験と日本人を対象にした実験では結果が異なることがわかり、評価は逆転しました。海外の研究は欧米人を対象として行われたものです。体内のL‐カルニチンの量のうち、欧米人は肉食からL‐カルニチンを多く摂っていて、体内に多く蓄積されているため、サプリメントとしてL‐カルニチンを摂っても効果が出にくくなっています。それに対して日本人は肉食が少ないので、L‐カルニチンを摂取すると効果が出やすくなります。
L‐カルニチンの評価として、別のこともあげられます。
サプリメントとして摂取できるなら、運動をあまりしないでL‐カルニチンを補えばよいと考える人もいますが、代謝を高める運動をしないと、その効果は弱くなります。ミトコンドリアでエネルギーを作り出すTCA回路の働きを高めるためには、身体を動かすことが必要で、L‐カルニチンを摂っているからと安心して、運動を減らす、食事も調整しないということではいけないことになります。
L‐カルニチンの役割は脂肪酸を細胞のミトコンドリアに通過させることであり、ミトコンドリアに取り込まれる脂肪酸が増えることは試験でも確認されています。しかし、大きな期待を寄せるときには、それなりのエネルギー代謝を高める運動も必要になります。
脂肪酸が多く取り込まれても、怠けて身体を動かさなければ、ミトコンドリアに対して材料過多となります。自動車に例えると、ガソリン(脂肪酸)を多く入れても、エンジン(TCA回路)が盛んに動かなければ充分に走行(エネルギー産生)できません。TCA回路が盛んに働かすには、やはり運動が重要です。
脂肪酸の代謝には有酸素運動が有効となります。TCA回路にはブドウ糖も脂肪酸もアミノ酸もアセチルCoAという高エネルギー化合物に変化して取り込まれていきます。アミノ酸は体内のタンパク質を構成する重要な成分であるので、できることならエネルギー源としては使われるのは避けたいものです。アミノ酸はブドウ糖と脂肪酸が不足したときに初めてエネルギー源となります。そのため、脂肪酸が不足しないように、脂肪酸を通過させるL‐カルニチンが重要となります。
TCA回路では、アセチルCoAが変化したクエン酸から9段階の変化を経て、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られています。そのときには酸素が必要で、酸素が不足していたのではエネルギー代謝が盛んになりません。そのため、L‐カルニチンを使うときには合わせてウォーキングなどの有酸素運動も行うことがすすめられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕