予防医学は医師だけでなく、薬剤師も取り組んでいます。機能性食品を研究して、これを予防医学に役立てようと考えた京都大学出身の薬学博士がいます。後に健康分野での講演、テレビ番組出演、書籍の執筆・監修などで有名になった久郷晴彦医学博士です。
その逸話ですが、当時の京都大学の医学部には医学科と薬学科があり、基本を学んだあとに進路を選択するという流れとなっていました(現在は医学部医学科、薬学部薬学科です)。
学生のときに、病気にさせない予防医学を目指したいということを担当教授に伝えたところ、手酷く叱られました。「医者の仕事を減らすつもりか」と。他にも理由はあったようですが、患者が減ると困る医師ではなく、医薬品と食品で患者を減らす薬剤師の道へと歩み始めたとのことです。
医薬品というのは病気になってから使われるもの、という印象があるかもしれませんが、初期段階で使われる医薬品は予防の範疇となります。糖尿病を例として話を進めますが、血糖値が上昇しすぎる糖尿病は血糖降下剤を使うことで改善ができます。糖尿病で亡くなるようなことはないものの、進行すると網膜症、腎症、神経障害が起こります。この3つは三大合併症と呼ばれます。合併症さえ出なければ、糖尿病でなかったのと同様に過ごすことができます。
合併症が起こらないように、初期段階で医薬品を使うことのほかに、食事療法と運動療法も必要になります。これは高血圧症でも脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)でも同じことがいえます。血圧が高いだけ、中性脂肪値やLDL値が高いだけという段階で対処すれば心疾患(心臓病)や脳血管疾患まで進むことなく、元の状態に戻すことができるわけです。
高血圧症も脂質異常症も食事療法と運動療法が重要ですが、中でも糖尿病は食事療法と運動療法を前提として医薬品が使われるのが大原則です。しかし、実際には食事療法も運動療法もなしに、医薬品が出されることは当たり前のように行われています。
食事療法には栄養学的なことだけでなくて、不足する成分を摂取することも含まれていて、久郷晴彦先生は、そこにアプローチしました。ちなみに久郷先生は、私の義父です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕