生活習慣病は初期段階では、医師の力を借りながらも自分の力で改善できるという話を前回しました。そして、糖尿病を例に、食事療法、運動療法を前提として医薬品(血糖降下剤)が使われるのが治療の大原則なのに、食事指導も運動指導もなしに初めから医薬品を使う医師についても言及しました。
そのような医師は珍しい存在ではなくて、今の日本の医療制度では当たり前のように行われていることです。医師の医療行為は保険点数の対象となって、収入を得ることができます。しかし、食事指導は医療機関の管理栄養士でなければ保険点数が加算されません。運動指導も理学療法士や健康運動指導士が担当します。
そのために生活習慣病の治療食の献立を示したり、簡単な運動(ウォーキングなど)を教えるくらいで止まっています。それは保険点数だけでなく、医師の教育にも関係しています。食事療法を例にすると、医師養成の大学の教育で食事療法の基礎となる栄養学の授業は選択制で行われているだけで、必修項目ではありません。栄養学を学ぶことができるのは医学部がある82大学のうち25校です。
それも多くは、栄養不足によって発症する疾患について学ぶ中で出てくるだけで、選択であっても栄養学を基本から学べる大学は少数派でしかありません。栄養学を学ばなくても、医師国家試験に不合格になるようなことはありません。
病気の予防にも治療にも栄養学は重要であることは今では常識になっているのに、医師が栄養指導をしても稼ぎにならないという制度のために、医学部の教育の中でも栄養学が充分に行われないという状況だけに、医師が頑張って栄養学を学ぶしかない状態なのです。そのために、医師の栄養知識の差は激しく、栄養学的に間違ったことまでメディアで平気で発言している医師がいるのも事実です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕