身体の機能として消化・吸収について話をするときに、難しい話や馴染みがない話をされると全体的な理解がしにくくなるということで、簡単な話で済ませることがあります。例えば、食べたものは唾液と胃液で消化されて、糖質がブドウ糖に、脂質が脂肪酸に、たんぱく質がアミノ酸に分解されれば、それで小腸から吸収されるというように話をすることがあります。
この流れに間違いはないとしても、消化・吸収の仕組みを知って、それを健康づくりに活かそうとするときには、簡単すぎる話では理解が進まないことにもなります。それが間違った健康法を実践させてしまうことにもつながりかねません。
同じ食事量であっても、朝食のほうが吸収がよいというのはよく知られていることで、その理由として一般的には「空腹時間が長いと多くの量を吸収しようとして」というような説明がされます。この説明に対して、「誰が吸収しようと考えているのか」という疑問が投げかけられることがあります。
このときに作用しているのは栄養の運び屋と呼ばれることもあるトランスポーターです。これは物質の輸送役をするタンパク質で、小腸壁にあって、栄養素が不足したときには働きが高まり、栄養素の体内濃度を調整しています。空腹時間が長くなると、トランスポーターの働きが盛んになって、吸収率が高まります。
朝食では、前日の夕食(もしくは夜食)からの時間が長くて、その栄養素も不足しているはずで、エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)は、どれも足りていません。だから、すべてのエネルギー源の吸収率が朝には高まっていてよいはずですが、最も吸収率が高まるのは糖質です。
糖質のブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源で、脳が全身のコントロールをしているので不足することは全身の機能に影響します。そこでブドウ糖を早く吸収させるわけですが、ブドウ糖は素早くエネルギー化されて、このエネルギーを使って全身の細胞が働くようになるということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕