全国の小学生と中学生の10%の約95万人が発達障害であると推計されています。これに未就学児を合わせると100万人を超えています。その保護者は、単純計算とはなるものの父母が2人、祖父母が4人で約600万人、合わせて700万人にもなり、国民全体の6%ほどにも達しています。
これだけの当事者が存在していて、支援を心待ちにしているのに対して、各地域の発達障害児支援施設(児童発達支援施設、放課後等デイサービス)で支援を受けることができる子どもは37%ほどで、残りの63%は支援が受けられていないことについては前回紹介しました。
発達障害児の支援をするのは、これらの施設のほかに学校や医療機関、福祉施設などが思い浮かべられることが多いようですが、本来なら発達障害に広く関わる、すべての人が支援者であるべきです。そのように考える根拠となっているのは、発達障害者支援法(2001年施行)です。
発達障害者支援法は、その名のとおり発達障害がある人を支援するための法律で、発達障害者は18歳以上、発達障害児は18歳未満と年齢によって分けられています。
発達障害者・発達障害児というと、発達障害の状態があると診察された人を示していると思われがちですが、発達障害があるだけではなく、それと同時に社会的障壁によって日常生活や社会生活に制限を受けている人のことを指しています。これは発達障害者支援法の第二条(定義)に示されています。
社会的障壁という用語は、発達障害がある人が日常生活や社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものを指しています。発達障害がある人が暮らしにくいのは、その人に原因があるわけではなく、社会的障壁がなければ、発達障害があっても生きにくいような状況にはならない、という考え方が根底にあります。
そして、第三条には「国及び地方公共団体の責務」が掲げられ、国や地方公共団体は発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であるとして、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じることを定めています。
その責務が充分に実行されていれば、現在のような発達障害と保護者の困難さはなかったか、少なくとも軽減されていたはずです。そして、地域での発達障害の理解も大きく進んでいたはずですが、それは現実化されていないというのが実感です。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕