歩くことは有酸素運動ではあるのですが、歩行速度を徐々に上げていくと無酸素運動との境に達します。歩行速度を高めるほど酸素を多く取り入れるようになって、酸素を使ったエネルギー代謝は高まっていくものの、それには限界があります。運動強度が高まりすぎると、酸素が多く取り込まれても、有酸素運動として充分に使われなくなります。
走っているときには、歩いているときよりも呼吸が激しくなって、酸素を多く取り込んでも脂肪のエネルギー代謝よりもブドウ糖のエネルギー代謝が盛んになります。ブドウ糖は、すぐにエネルギー化するため、ブドウ糖の代謝を優先させた結果です。脂肪をエネルギー化させて、多くのエネルギーを長く発生させようとしたら、有酸素領域の運動で止めておくことです。
その有酸素運動の領域は、走り出さないまでも頑張って歩く状態ですが、あまり運動をし慣れていない人の場合には、それもが無酸素領域の歩行になってしまいます。効果的に脂肪代謝を進めるためには、日頃から、よく歩くようにして、酸素を使ったエネルギー代謝の効率をよくしておくことが必要になるのです。
では、無酸素領域の歩行は、あまり役に立たないのかというと、そんなことはありません。「歩くだけで筋肉は増えない」ということが言われるのですが、運動をし慣れていない人や、体力や持久力が低下してきた高齢者の場合には、無酸素領域のウォーキングで筋肉を増やすことができるのです。
といっても、運動をするのが苦しく感じてきた人に対して、歩くだけだからといって無酸素領域の頑張って歩く(場合によっては必死になって歩く)ことをすすめるのは酷なことです。そこで実際に行っているのは普通歩行と呼ばれる時速4kmほどのウォーキングと、歩くスピードを高めた速歩を繰り返すことです。
具体的な歩き方については、年齢や体力などによって普通歩行と速歩の時間をプログラム化して指導する必要があるのですが、簡単に理解できる感覚としては、「速歩で息苦しさを感じるようになったら普通歩行、普通歩行で息が整えられてきたら速歩」という繰り返しとなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕